◆遺言は必要か

それぞれの家庭の事情や、個人の考え方によってその必要性は異なると思いますが公正証書遺言の数の増加や相続に関する紛争の増加をみるとその必要性は高まっているといえるでしょう。

遺言は遺族に対する思いやりの表れです。遺族は相続開始後、処理しなければならないことが多く、遺言がなければ大変な思いをすることになります。
心理的にも喪失感や不安感があり、その上遺産の分割などスムーズに出来ない場合は苦痛ですらあります。こうしたことを防ぐためには遺言が必要だと思います。
ご自分の考えをまとめるため、また遺言の書き方に慣れるため一度作成してみてはいかがでしょうか。

当事務所では,遺言書の書き方について指導いたします。


以下のような場合、遺言は特に必要となるでしょう。

1 法定相続と異なる配分を指定したいとき。
  配偶者や子供の年齢、経済力などを考慮し最適の指定を出来るのは、被相続人である。

2 遺産の種類、数が多いとき
  このような場合、相続人の間で協議がまとまらずトラブルとなることがある。この紛争防止には遺言 が最適です。

3 推定相続人が兄弟姉妹だけのとき
  残された配偶者にとって義理の兄弟姉妹との遺産分割協議は厄介なことである。代襲相続となるケー スもある。
  遺言により配偶者にすべてを相続させることが出来る。       

4 個人事業、農業などの継続を希望する場合
  資産の細分化や後継者問題などで事業継続が困難とならないよう遺言で指定する。

5 推定相続人以外に遺産を贈りたい時
  内縁の配偶者、事実上の養子、療養看護してくれた人、息子の嫁、公共施設への寄付、財団の設立など。

6 その他
  認知したい子供がいる。遺産を与えたくない相続人がいる。など


◆遺言の種類

  普通方式の遺言

遺言の種類 長  所 短  所
自筆証書遺言 簡単に作成できる。
(自筆、日付記入、署名、捺印)
費用もかからない。
遺言した事実及び内容を秘密に出来る。
詐欺・脅迫の可能性がある。
紛失や隠匿の恐れがある。
方式不備により無効になることもある。
家庭裁判所の検認が必要。
公正証書遺言 公証人が作成。内容が明確。
家庭裁判所の検認不要。
公証役場で保管するので安全、確実。
原本は公証役場に20年間又は遺言者が100歳に
なるまでのどちらか永い年数保管。
字が書けなくても遺言できる。
証人が二人必要。費用がかかる。
公証人が関与するので手続きが煩雑。
遺言の存在と内容を秘密に出来ない。
秘密証書遺言 遺言の存在を明確にし、秘密が保てる。
改変の恐れがない。
署名・押印できれば、字がかけない者でも出来る。
隠匿される恐れがある。
公証人が関与するので手続きがやや煩雑。
証人二人必要。
家庭裁判所の検認が必要。
遺言の内容について紛争の可能性がある。


特別方式の遺言

一般的ではないので省略します。


『自筆証書遺言』

1.長所
(a)証人や立会人がいらず、自分一人で作れるので簡単で費用もかかりません。
(b)自分一人で作れるのですから、遺言書を作成したことを秘密にできます。

2.短所
(a)法律の要件どおり作成されていなかったため遺言が無効になったり、意味不明のため遺言者の意思通り
  に
ならない場合があります。
(b)作成が簡単なだけに偽造や変造の危険性があります。
(c)紛失したり、相続人に発見されない(隠匿される)おそれがあります。
(d)検認手続き(*1)のために費用および手数がかかります。


*1 検認手続き
家庭裁判所が遺言書の形式、態様などを調査・確認してその偽造・変造を
防止し、保存を確実にする目的で行われるいわば証拠保全手続きです。

3.作成するにあたってのご注意

(a)遺言内容全文、日付、氏名の一字一句をすべて自分で書き、最後に押印します。ワープロやタイプで打っ
  たものおよび録音・録画によるものは無効です。

(b)用語は自由で、外国語や略字も使用可能。また、用紙・様式も拘束されず枚数も自由です。

(c)日付の明記が必要です。遺言書が何通もあるとき、遺言内容に抵触する部分があるとその部分につい
  て、日付の新しい遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。
  民法は特に、日付についても自筆を要求しているのです。
 (日付印を使用したものや日付のない遺言は無効)。

(d)加除訂正にも一定の方式が必要です。変更した場所に印を押したうえ、その場所を指示して変更したこ
  とを付記し、その後に氏名を書かなければなりません(捺印は遺言書の作成に使用したもの)。加除訂
  正が多いとまぎらわしくなるので全文を書き直したほうがよいでしょう。


(e)筆記具は何を使用してもかまいません。しかし、鉛筆等は避けたほうがよいでしょう。また偽造・変造
  の防止、秘密保持などのためにも封筒に入れ、封印をして保管することをお勧めします。
  中味が遺言書であることを記載しておくことも忘れずに。


(f)同一用紙に2人以上の人が遺言を記載することは、禁止されています。作成しても無効となります。

4. 保管方法

遺言書は、死後、確実に発見されるように、しかも安全な方法で保管することが必要です。自ら保管するよりも、その遺言によって最も利益を受ける推定相続人もしくは遺言執行者あるいは信頼のできる知人、友人、弁護士、行政書士などに保管を依頼するのが望ましいでしょう。

遺言書を自己の利益のために故意に隠したり、破棄した相続人は相続欠格者として相続人の地位を失います

 遺言書 サンプル

                       遺 言 書

 遺言者 佐藤一郎 は、この遺言書により次のとおり遺言する。

 1、妻 佐藤花子 には次の物件を相続させる。
 (1) 東京都渋谷区代々木1丁目2番3
      宅 地 123.45u
 (2) 同所同番地所在
      家屋番号  2番3
      木造瓦葺2階建居宅1棟
      床面積  1階 44.55u
            2階 35.25u
 (3) 前記家屋内にある什器備品その他一切の動産

 2、長男 佐藤太郎 には遺言者の経営する渋谷鉄工所の後継者として、その事業
   経営をしてもらうため、次の物件を相続させる。
 (1) 東京都渋谷区代々木1丁目23番
      宅 地 225.25u
 (2) 同地同番地所在
      家屋番号  23番
      鉄筋コンクリート造陸屋根2階建工場
      床面積  1階 150.25u
             2階 150.25u

 3、長女 田中亜紀子 には婚姻の際、現住居の住宅資金の補助をしてあるので、次
   の債権を相続させる。
 (1) 三井住友銀行渋谷支店の定期預金全額
 (2) 国債   額面金500万円

 4、この遺言の遺言執行者に 行政書士 鈴 木 紘 治 を指定する。


          平成16年2月10日

                         遺言者 
     佐藤 一郎   印




『公正証書遺言』 

遺言者は署名捺印する以外はなにも書く必要がなく、公証人(*1)が遺言の内容を聞いて、遺言者に代わって遺言書を作る方法です。証書は通常、原本・正本・謄本の合計3通を作ります。原本は公証役場で原則として20年(遺言者100歳迄保管の例が多い)保存され、正本と謄本は遺言者(遺言執行者を指定すればその人)に渡されます。また、万一紛失しても再交付の請求ができます。

1.長所

(a)公証人が作成するので、主旨の不明などを理由に無効になる恐れがありません。

(b)原本が公証役場に保管されますので、紛失・変造のおそれ、また、相続人による隠とくや破棄などのお
  それがありません


(c)家庭裁判所の検認の必要がありません。

(d)文字を書けない人でも、署名さえできれば遺言書が作成できます。

2.短所
(a)公証人に依頼するため、ある程度の費用がかかります。

(b)2名以上の証人(*2)の立会いが必要です。

*1)公証人
法務大臣が任命した者で、裁判官、検察官、弁護士などを永年勤めた人の中から選ばれた公正中立的な立場の人です。いわば公務員として、書類を作成している人ですから公正証書遺言は成立について完全な証拠力を持ちます。また、「検認」が不要ですから、迅速な遺言の執行がなされます。後日の紛争を避けるためにも公正証書による遺言が最適といわれています。


 (*2) 証人になれない人
・未成年者
・推定相続人、受遺者およびその配偶者ならびに直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および雇人


法的に効力のある遺言事項

相続財産に関する事項

@相続分の指定・指定の委託

A遺産分割方法の指定・指定の委託

B遺産分割の禁止
   五年以内の期間であれば遺産分割を禁止することは可能。

C遺贈〈遺言による財産の贈与〉

D財団法人設立の寄付行為

E信託の設定

F生命保険金の受取人の指定・変更

G特別受益の持ち戻し免除

H相続人相互の担保責任の指定

I遺贈減殺方法の指定

身分に関する事項

  @ 推定相続人の廃除とその取り消し

    廃除というのは推定相続人の非行を原因として、その相続権の剥奪の審判を請求する
   こと。 生前でも出来る。

  A 子の認知

      婚姻外で生まれた子供との間で法律上の親子関係を創設する行為。戸籍の届出によって
    成立。生前に
認知することもできる。

   B  後見人・後見監督人の指定

      遺言によってのみできる行為。

その他

   @ 祭祀承継者の指定

A 遺言執行者の指定・指定の委託



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埼玉県行政書士会上尾支部l理事
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行政書士実践実務研究会会員

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埼玉県行政書士会上尾支部所属

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